スタッフ向け 気管チューブ:スパイラルチューブについて
みなさん、こんにちは。
救命センター医師の山口です。
今回はスタッフ向けの内容です。
気管チューブについてです。
気管チューブは麻酔や集中治療で人工呼吸を必要とする患者さんの口から喉の奥、
気管に挿入し、人工呼吸器から酸素などを送り込むとても大切なチューブです。
この気管チューブですが、いろいろな種類があります。
その中のスパイラルチューブについて説明します。
通常の気管チューブはやわらかいチューブですが、
この中に細い金属のワイヤーをらせん状に入れたものがスパイラルチューブです。
そのため曲げを強くしても閉塞(キンクkink)することがありません。
このため、腹臥位(腹ばい)で行なわれる手術で使用されることが多いです。
腹臥位手術は気管チューブの屈曲が強くなりがちなためです。
このスパイラルチューブですが、最大の欠点があります。
それは一度咬まれてしまうとチューブが潰れて、その形のままとなり、
復元することができない点です。
口の中に入っているチューブなので、咬まれる可能性があります。
大きく潰れた場合には酸素が流れなくなってしまいます。
大変危険な状態になります。
このチューブは指で押してもかなり固く、変形することはほとんどありません。
指で潰すことができた方はかなりの怪力の持ち主です。
ただ一般の方でも咬む力は大変強いので、容易に潰れてしまいます。
写真は私たちの救命センタースタッフが咬んだものです。
少し恥じらいがあったのかあまり大きな変形にはなっていませんが、
これを指で元の形に戻そうとしても戻りません。
通常の気管チューブは咬むと穴が開いたりはしますが、
潰れたままの状態になることは稀です。
ある程度復元してきます。
歯がまったくない患者さん、
筋弛緩薬が処方されその効果のある患者さんでは咬むことはできません。
歯がある患者さんで筋弛緩薬の効果が切れてくると
チューブを潰すことくらいは簡単です。
これを防ぐためバイトブロックという硬い器具をはさんで、
気管チューブを咬めないようにしています。
バイトブロックについては次回に説明したいと思います。
つづく