寒さ厳しい季節の「熱い男の熱中症にかける熱い、暑い、熱い物語」
救命救急センター医師山口です。
4か月ほど前のことです。
分厚い封筒が届きました。
以下要約と抜粋です。
お手紙の差出人は63歳の川上さん、兵庫県で小さな通販会社を営む男性。
モトクロスが趣味。
危険なスポーツであるため事故現場にも多く遭遇。
救護知識を独学で勉強、自費で救護機材などを購入し、救護活動をするようになりました。
熱い男、川上さんは「危険なスポーツを選択した者の義務」と考えたそうです。
200件以上も現場で救護活動をして、重症熱中症にも立ち会いました。
モトクロスのコースは山の中にあって、救急車を呼んでもすぐには来ません。
勉強熱心な川上さんは、早くから海外では冷水浴が重症熱中症の治療の主流になってきていることを知っていました。
まだ日本ではそのような方法は普及していない頃です。
現場に偶然居合わせた現役看護師さんに「冷水に漬けることができたらなあ」と話しかけたところ「そんな事をしたら心臓麻痺起こすよ!」と冷笑され、くやしい思いをしました。
そんなあるとき、川上さんは以前の救命センターブログ記事「重症熱中症患者は氷水にジャボーン」を読んで、大変な衝撃をうけました。
「熱中症から命を救うにはこれしかない!」と。
モトクロス場でも冷水浴に使えるものはないか、いろいろ探しましたがありませんでした。
結局、何と自分で作ることにしました。
それからは苦難の連続です。
いろいろな会社に話をもちかけますが、鼻で笑われることや門前払いは数え切れず・・・
何度も心が折れそうになったそうです。
コンセプトは以下を満たす簡易浴槽
- 小さく携帯できる
- 少ない水で効率よく冷却できる
- すぐに展開できる
試行錯誤が続きます。
そして想いもモトクロスだけでなく、すべてのスポーツの熱中症を何とかしたいに。
いつしか3年が経っていました。
ついに試作品が完成。
この度、初号機P-PEC(ピーペック)が完成しました。
何と川上さんのご厚意で、当院に寄贈していただきました。
先日、宅急便で送られてきたP-PECをみて、びっくりです。
小さい!
使ってみました。
簡単に展開できます。あっという間に開きます。
水もかなり少ない量(80L)で済みます。
ポリタンク4杯の水とクーラーボックスに氷を用意しておけば、どんなところでもOKです。
これはすごい!
川上さんの熱い情熱がつまったP-PEC
完璧です。脱帽です。
6月から始まる地域のマラソン大会などには設置したいと思います。
読者のみなさんにもお願いです。夏のスポーツイベントなどで救急車がすぐに来ない現場には、ぜひご検討ください。
川上さんのお手紙にありました。
「この製品を開発する強烈なきっかけを与えて下さった山口先生のブログがなければ、この製品は決して完成し得なかった物です。開発中に何度も心が折れそうになった時、先生のブログの一文を思い出し、心の支えにして頑張って参りました。」
私たちにとっても、これ以上のうれしいお言葉はありません。
お手紙を読み終えて、涙が止まりませんでした。
地球温暖化で今まで以上に熱中症対策が必要になってきています。
多くの方に関心を持っていただきたいです。
▼P-PEC公式ページ
https://profit.co.jp/p-pec/
▼P-PEC 体験動画(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=A2EVY3pfc-U
※当ブログでは特定の企業や、製品を推奨する立場をとっていません。
製品開発の経緯や川上さんの情熱、製品の完成度の高さからあえて掲載いたしました。