“あきらめない強い心”が起こした奇跡
救命センター医師の山口です。
Sさんは20代のスポーツが大好きな女性です。
その日は、自宅のある関東から湯沢のスキー場に来ていました。
スキー滑走中の事故でした。一瞬の出来事とは言え、あまりに大きな事故でした。
病院に救急搬送されて、緊急手術を受けました。
しかし、その後も手足はほとんど動かない状態でした。
翌朝、私はSさんと勤務交代で初めて対面しました。
このような事故の患者さんは、これから先の人生や、職がどうなってしまうのだろうと不安や恐怖、失望などで頭の中は混乱しています。
話をしたがらない方も多いです。
初めて会う時はこちらもとても緊張します。
予想に反して、Sさんは晴れやかな穏やかな表情でした。
びっくりしました。
今まで、こんな表情の患者さんはみたことがありません。
もしかしたら、ケガのことをあまり知らされていないのかな?
そんなことはありません。
彼女は自分の状況を、十分理解できていました。
落ち込むのは1年に1回だけと前から決めていたそうです。
前を向いて、今をしっかりと生きるというオーラが彼女から出ているのを感じました。
入院中、何度かつらいこともありましたが、彼女は前進しました。
新潟県のいろいろなことを看護師から楽しそうに聞いていました。
一般病棟へ移ったあとも、リハビリをがんばっていました。
2ヶ月の入院で、誰もが、びっくりするほど手足が動くようになりました。
自分で車いすを使って、一般病棟から会いにきてくれました。
最後に、わたしたち救命センタースタッフにきれいな字でお手紙を書いてくれました。
こんなに、上手に字が書けるまでになって・・・。
わたしたちスタッフもSさんから、パワーをもらいました。
“あきらめない強い心”は、奇跡を起こすよ。Sさんがささやいています。
わたしたちは、あなたをずっと応援していきます。