内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

早期胃がんに対する内視鏡切除とは

消化管と呼ばれる臓器のうち、食道・胃・大腸では検査法の進歩により早期がんが見つかるケースが増えて来ました。早期がんに対して行われている内視鏡的切除は、開腹手術に比べ、おなかに傷がつかず、臓器を残すことができます。また、入院日数が短期間ですみ、患者さんへの負担も軽くできるため、従来の外科治療に代わる新しい治療法として注目されています。

内視鏡的粘膜下層剥離術の適応と現状

内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection;ESD)は、高周波ナイフを用いて病巣周囲の粘膜を切開し、さらに粘膜下層を剥離して切除する方法です。がんが粘膜内にとどまり、リンパ節転移の可能性がほとんどないと判断された場合、ESDの適応となります。胃がんは2006年、食道がんは2008年、大腸がんは2012年にそれぞれ保険適用となりました。ESDでは従来は切除が困難であった病変を内視鏡的に一括で切除することが可能です。病変を確実に取ることで、病理診断(顕微鏡による最終診断)の精度が上がり、追加治療の有無などの必要な情報を得ることができます。食道・胃では約8日間、大腸では約5日間の入院で治療を行っています。当院では2015年6月の開院時から食道・胃・大腸の3領域においてESDに取り組んでおり、年々件数も増えてきています。

当院における麻酔方法

食道・胃のESD中は苦痛を軽減する目的で鎮静剤・鎮痛剤を使用し、眠った状態で治療を受けていただきます。本邦では多くの施設で内視鏡室において静脈麻酔(「内視鏡室で行う静脈麻酔」)のもとに行われています。しかし、適切な麻酔深度が得られない場合や、治療が長時間となる場合には患者さんに苦痛を強いてしまうことがあります。当院では長時間の治療が予想される場合や呼吸器・循環器系に合併症をお持ちの方、静脈麻酔が効きづらい方に対して麻酔科の協力のもと、手術室でのESD(「手術室で行う全身麻酔」)を行っています。治療中は麻酔科の医師が全身管理を行うため、より安全に治療を行うことができます。

今後とも安全で質の高い医療を提供していきたいと考えております。ご不明な点がございましたら、外来受診時に担当医にお聞きください。

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