膀胱に癌ができる膀胱がんは、膀胱の筋肉には浸潤していない比較的早期のがんと、膀胱の筋肉にまで浸潤した筋層浸潤性がん、他臓器に転移した転移性がんに大きく分けられ、治療法がそれぞれ異なります。筋層浸潤癌は膀胱を摘出する手術が必要です。
膀胱の癌などで膀胱を摘除しなければならない場合は今まではおなかの真ん中を15~20㎝切開し、膀胱を摘出していました。膀胱がなくなると尿を体の外に出すための道を作りお腹から外に出す回腸導管などの尿路変向を行わなければなりません。非常に大掛かりな手術をしなければなりませんし、術後尿の出口のストーマというお腹の部分に蓄尿袋をつけなければなりません。
当院は県内で唯一の腹腔鏡下膀胱全摘除術認定施設です。腹腔鏡手術は少ない手術侵襲で行うために腹腔鏡(細いカメラ)と特別な道具を用いて小さな傷で行います。腹部の5〜6カ所を小さな穴をあけ、筒状の器械を入れます。そこからカメラと手術器具を挿入して炭酸ガスでお腹をふくらませ(気腹)、手術を行います。最終的にはお腹の真ん中を5㎝ほど切開し、腹腔鏡手術で摘出した膀胱を取り出します。
膀胱を摘出した後、尿道が使える人は腸管で新しい膀胱をつくり、尿道につなぎ、尿を体の外に出します。今までと同様な排尿ができます。術後お腹に5㎝ほどの傷と腹腔鏡操作孔の跡が数カ所残るだけです。術後入院期間は約1ヶ月です。自然排尿を維持することは患者さんの生活の質(QOL)の維持には非常に重要と考え、自然排尿型代用膀胱造設術を積極的に行っております。
膀胱と伴に尿道を摘出する必要があり、尿道を使えない人は腸の一部を使い腎臓からの尿管をその腸につなぎ、その腸管で尿を体の外に出すストーマを作ります。尿路変向は体に集尿袋を装着する必要があります。
なお、腎盂癌・尿管癌は手術を行う前に術前抗がん剤治療が有効です。当科では適応のある場合に術前抗がん剤治療を行います。また、最近は免疫療法が開発されてきています。