研修目標と特色
1研修目標
将来の専門領域にかかわらず、医師として必要な基本的知識・技術・態度を身につけることを目的とする。
2プログラムの特色
魚沼は新潟県で最も医師が少ない地域のため、“かかりつけ医”のない人がたくさんいます。そのため、多くの患者さんがかかりつけ医を経ないで直接救急外来を受診します。救急症例は、脳出血・脳梗塞、急性心筋梗塞、大腿骨頸部骨折、雪下ろし外傷、スキー・スノボ外傷、交通事故など多岐にわたります。こうした症例に対応するため、救急系、外科系、内科系の3名の当直医、産婦人科医、小児科医に加え、全診療科の医師が30分以内に来院できるような体制をとっています。
当院の臨床研修では、このような診療体制に支えられ、どのような疾患でも最善の救急診療を研修することができます。もちろん、当院だけでは対応できない症例もあります。しかし、そのような症例を経験することは、将来専門医になったとき「どこまでできるか、どの時点で紹介すればよいか」を判断するときに役に立つに違いありません。
当院に入院する症例で、疾患を一つしか持たない人はほとんどいません。高齢者になればなるほど、多くの合併症を持っています。また、二つ以上の疾患を並行して治療しなければならないケースもたくさんあります。そのような症例を対象とする診療科として、総合診療科が設けられています。多くの病院では「どの科にかかればいいかわからない」「異常がないといわれたが症状が治まらない」などの症例が、総合診療科外来を受診します。しかし、当院では一歩進んで、複数の問題(‘疾患’とは限らない)を持つ入院症例を対象として診療を行います。くわえて、症例の多い整形外科を必修とし、院内で精神科研修ができ、同一医療圏での地域医療研修を行うなど、多くの特色を持っています。
プログラム責任者及び副プログラム責任者
プログラム責任者:髙田俊範(副病院長兼臨床研修管理部長)
副プログラム責任者:角南栄二(消化器外科・一般外科部長)
募集定員及び採用方法
募集定員:1年次生 8名
募集方法:医師臨床研修マッチング協議会のマッチングに参加
採用方法:書類選考及び面接等により決定
研修計画
1ローテーション(例)
1年目
4 | 8 | 12 | 16 | 20 | 24 | 28 | 32 | 36 | 40 | 44 | 48 | 52 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
総合診療(4週) |
消化器(4週) |
循環器(4週) |
呼吸器(4週) |
腎膠原病(4週) |
内分泌・代謝(4週) |
脳神経(4週) |
外科(8週) |
小児科(4週) |
産婦人科(4週) |
精神科(4週) |
整形外科(4週) |
2年目
4 | 8 | 12 | 16 | 20 | 24 | 28 | 32 | 36 | 40 | 44 | 48 | 52 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
総合診療(4週) |
麻酔(4週) |
救急(4週) |
地域医療(8週) |
選択(32週) |
1内科
1年目に、28週間連続して内科研修を行います。このうち、4週間は総合診療科に所属します。同科研修中は、多くの合併症を持つ症例、および複数の疾患を併せ持ちどちらも治療しなければならない症例などを受け持ちます。また、2年目にも4週間、総合診療科で研修します。複数の臓器に疾患を持つ症例を対象に、1年目より細かい点まで踏み込んだ内科研修を行います。
また、1年目には、総合診療科と連続して消化器内科、循環器内科、呼吸器感染症内科、腎膠原病科、内分泌・代謝内科、および脳神経内科をそれぞれ4週ずつ、合計24週間研修します。これらのサブスペシャリティ研修では、各診療科に特有な高度の専門的知識・技術を必要とする診療を研修します。例えば、消化器内科、呼吸器感染症内科であれば悪性腫瘍診断・治療や各種内視鏡手技、循環器内科ではインターベンションを含む急性冠疾患対応、腎膠原病内科では血液透析や膠原病疾患に対する免疫抑制療法、内分泌・代謝内科では強化インスリン療法や内分泌学的負荷試験、脳神経内科では変性疾患診断・治療などが代表的な研修項目です。
ほとんどの場合、1年目の4週間の研修では不十分です。特に内科系志望の場合、2年目の選択研修で各サブスペシャリティ独特の検査や手技を深く学ぶことをおすすめします。また、血液内科については、新潟大学医歯学総合病院や県立がんセンターでの専門的な研修が可能です。さらに、より専門的な循環器内科インターベンションを学ぶには、立川綜合病院で集中的な研修をすることもできます。
2外科
外科研修では、小手術手技の習得、実際の手術への参加、周術期管理の理解を目的としています。実際に患者を担当し、専門医の指導のもとチームで診療にあたります。上部消化管、下部消化管、肝胆膵および乳腺領域の良悪性疾患を対象とし、幅広く症例を経験できます。病棟・手術室での研修が主ですが、平日1コマ/週の外来研修を行うことで、術前・術後患者の外来マネジメントについても習得が可能です。
3小児科
当院は魚沼圏域唯一の小児入院施設であり、軽症から重症患者・専門性を要する患者まで幅広く診療にあたっています。4週間の小児科研修では、小児の診察の仕方と基本手技、コモンディジーズの診療の習得を目標とします。研修期間中に、平日午前(1コマ/週)一般小児科外来研修を含みます。さらに希望があれば、コモンディジーズ以外の疾患を対象とした専門的な研修も可能です。
4産婦人科
当院は地域周産期母子医療センターの機能を有し、早産・妊娠高血圧症候群・多胎などのハイリスク症例の分娩も取り扱っています。子宮頸癌・子宮体癌・卵巣癌などの婦人科悪性腫瘍に対しては、外科・泌尿器科・放射線治療科と連携した集学的治療を行っています。また、3D内視鏡システムを用いて、腹腔鏡下子宮体癌手術・骨盤臓器脱に対する腹腔鏡下仙骨腟固定術を含む腹腔鏡下手術も行っています。以上のように産婦人科専門領域の幅広い研修が可能です。
5精神科
当院には、精神科閉鎖病棟があります。そのため、一般的な精神疾患に加え、新潟県全体から集まってくる身体疾患を合併した精神疾患患者への対応を学ぶことができます。
6整形外科
当院が立地する魚沼圏域は、スノーリゾートが多数営業しています。そのため、ウィンタースポーツ外傷の救急搬送件数が多くあります。また、農業従事者が多く、公共交通機関が運行しない地域も目立つことから、農作業中の事故や転倒・転落、自家用車等による交通事故外傷も多数受診します。さらに、超高齢社会を反映した変形性関節症や大腿骨・脊椎骨折など幅広い症例を経験できるため、必修としました。
7救急科
救急研修は、12週のうち4週を救急科、4週を麻酔科、残りの4週を日当直による他科との並行研修とします。当院の救急科では、救急外来(ER)で救急車の対応と、ACU(Acute Care Unit)で重症入院患者の集中治療を行っています。救急科研修では、医師として身に付けておかなければならない、重症患者の対応を数多く経験することができます。他科の医師と協力して、幅広く重症患者をみることが可能になります。
8循環器
急性期および待機的心臓カテーテル検査・治療、およびペースメーカー植込み術などを研修します。また、うっ血性心不全についても、地域医療機関と連携しながら主に急性期診療に関する研修を行います。希望があれば、連携する立川綜合病院の循環器内科、心臓血管外科および心血管放射線科での研修も可能です。
9選択
研修医の希望に応じて、32週の選択期間を設けます。内科系、外科系、病理診断科などのサブスペシャルティ科を選択し研修します。
また、多くの疾患や患者を経験したい場合は、複数の内科サブスペシャルティを組み合わせて研修することも可能です。例えば、内分泌・代謝内科と脳神経内科を同時に研修することもできます。
10地域医療
当院は、「地域全体でひとつの病院」のコンセプトのもと、市立小出病院や南魚沼市民病院などと役割分担をすることで地域完結型医療を目指しています。当院での地域医療研修は、市立小出病院、南魚沼市民病院、小千谷総合病院で実施します。これらの医療機関はいずれも当院から自動車で30分以内に位置していて、地域完結型医療の一端を担っている病院です。こうした病院で地域医療研修を行うことにより、「地域全体でひとつの病院」で多面的に実施されている医療を体験することができます。
11一般外来
一般外来研修は当院内科研修中(総合診療科外来4コマ=2日相当x2年)、外科研修中(一般外科外来研修8コマ=4日相当)、小児科研修中(一般小児科外来研修4コマ=2日相当)、および地域医療施設(一般外来、午前午後外来2コマx2/週を8週=16日相当など)で実施します。これらを合わせて、40コマ=20日=4週相当以上の一般外来研修を行います。
12当直
原則として、一ヶ月に平日当直2回と土日日直2回を担当します。
2基幹型臨床研修病院における研修分野及び期間
必修科目
内科28週+4週、救急12週、外科8週、小児科、産婦人科、精神科各4週 合計64週
病院で定めた必修科目
整形外科4週
選択科目
救急、小児科、産婦人科、精神科、麻酔科、整形外科、総合診療科、循環器内科、内分泌・代謝内科、腎膠原病科、呼吸器・感染症内科、消化器内科、脳神経内科、消化器外科・乳腺外科、脳神経外科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、放射線治療科、呼吸器外科、皮膚科、眼科、リハビリテーション科、病理診断科 合計32週
3協力型臨床研修病院・協力施設における研修分野及び期間
協力型病院の研修科目は、原則として研修医の希望に基づき、研修先の協力型病院との話し合いの上で決定し、研修開始後は研修医と協力型病院により調整します。それぞれの研修科目の研修期間についても、同様に調整します。
協力施設における地域医療研修については、研修開始後に決定します。各協力施設から期間別研修医受け入れ可能人数が研修医に提示され、研修医の希望と調整の上で研修を行う協力施設を決定します。協力型相当大学病院、協力型病院・協力施設における研修分野及び期間は以下のとおりです。
新潟大学医歯学総合病院(協力型相当大学病院)
選択:救急、小児科、産婦人科、精神科、麻酔科、整形外科、循環器内科、内分泌・代謝内科、血液内科、腎・膠原病内科、呼吸器・感染症内科、消化器内科、脳神経内科、消化器外科、乳腺・内分泌外科、脳神経外科、泌尿器科、耳鼻咽喉科・頭頸部外科、放射線治療科、放射線診断科、呼吸器外科、皮膚科、形成・美容外科、小児外科、眼科、心臓血管外科、リハビリテーション科 合計4~28週
新潟県立十日町病院(協力型病院)
選択:救急、小児科、整形外科、内科、脳神経内科、外科 合計4~28週
立川綜合病院(協力型病院)
選択:循環器内科、心臓血管外科、心血管放射線科 合計4~12週
新潟県央基幹病院(協力型病院)
選択:救急、整形外科、外科、内科(総合診療科、消化器内科、呼吸器内科、腎臓内科、循環器内科、脳神経内科)、放射線科 合計4~28週
新潟県立がんセンター新潟病院(協力型病院)
選択:血液内科、形成外科、放射線科、緩和ケア内科 合計4~28週
魚沼市立小出病院(協力施設)
必修:地域医療4~8週
南魚沼市民病院(協力施設)
必修:地域医療4~8週
小千谷総合病院(協力施設)
必修:地域医療4~8週
新潟県庁(協力施設)
選択:医療行政研修4~8週
指導体制
1プログラム統括責任者
プログラム統括責任者は研修医から提出される経験録、実習記録から不足の経験などを補うよう、研修医および指導医に助言します。
2指導医
各分野の認定医・専門医・指導医(臨床研修指導医講習会受講済みかつ臨床経験7年以上)の中から、各教育責任者が推薦し、研修管理委員会が認定した指導医によって4~8週にわたり指導を受けます。
3日当直指導医
内科系、外科系、救急科、必要に応じて小児科、産婦人科の上級医の日当直医の指導を受けます。
4入院患者指導医
入院患者の研修では、研修医は担当医となり主治医(指導医)と一緒に診療します。研修医は、受け持ち入院患者の退院2週間以内に入院総括を記載し指導医のチェックを受けます。
5その他の指導者
病棟及び外来の看護師長、各メディカル部門の長、各事務部門の長は、オリエンテーションやレクチャーの講師として指導します。
6評価表の入力
研修医と指導医は、各終了時にそれぞれがオンライン卒後臨床研修評価システム(EPOC2)による評価を行い、評価表に入力します。研修管理委員会は速やかに評価します。
7メンター
必要に応じて、若手医師を複数名メンターとして選出し、定期的なコミュニケーションを通じて、研修生活やキャリア形成全般についての助言、精神面でのサポートなど、継続的な支援を行います。
8病歴要約、経験録の提出
- 病歴要約、診療録は、オンライン卒後臨床研修評価システム(EPOC2)を用いて提出します。
- 外来又は病棟において経験した「経験すべき29症候」、「経験すべき26疾病・病態」を呈する患者の病歴要約(入院サマリーなど)および経験録を、研修開始後6か月毎に臨床研修管理委員会に提出し中間評価を受けます。
- 研修医は2年間の研修終了2ヶ月前までに、全ての病歴要約と経験録を研修管理委員会に提出し、最終評価を受けます。
9検査結果報告書の確認
研修医は自らオーダーした放射線科画像検査や病理組織検査については、検査報告書を確認し、電子カルテ上で確認済みの入力をしなければなりません。
10総合評価
臨床研修管理委員会評価委員会は、評価表を基に研修終了2ヶ月までに提出された病歴要約、評価表、学会・研究会への発表などを勘案して、「臨床研修の目標の達成度判定票」を作成し、総合評価を行います。プログラム上の評価基準を満たし、入院病歴要約がすべて記載され、また画像および病理報告書がすべて確認されていると認められた研修医に研修修了の判定を行います。
研修医の待遇
1身分
常勤医師として雇用(臨床研修医)
2給与
<1年次>
基本給:360,000円
当直手当:21,000円/回
時間外勤務手当:当院規定により支給
月額 計:528,000円程度(時間外勤務45時間の場合)
※上記以外に、各種手当あり
<2年次>
基本給:390,000円
当直手当:21,000円/回
時間外勤務手当:当院規定により支給
月額 計:568,000円程度(時間外勤務45時間の場合)
※上記以外に、各種手当あり
3勤務時間及び休暇
8:30~17:30(休憩時間12:00~13:00)
年次有給休暇(1年次:10日、2年次:11日+繰越分)、 夏季休暇(有給、5日/年)
※上記以外に、忌引休暇、私傷病休暇等各種休暇あり
4時間外勤務及び当直
あり(当直は研修計画1)の12参照。)
5社会保険・労働保険
健康保険、厚生年金、雇用保険、労働者災害補償保険適用あり
6健康管理
定期健康診断年1回、そのほか勤務実態に応じて夜勤者健診等あり
7医師賠償責任保険
病院加入有り、個人加入任意
8宿舎
病院隣接地の研修医宿舎(1K又はDK。単身用30戸/家具付き・Wi-Fi完備)を使用可能
使用料 居室:無料 駐車場:月額5,000円
9外部研修活動への補助
学会・研究会等に係る参加費、旅費補助あり(上限141,000円/年)
10研修プログラムに定められていない病院等での診療の可否
不可(一般財団法人新潟県地域医療推進機構職員就業規則による)
11その他
- 院内に研修医専用の居室あり(持ち込みPC等によるインターネット利用可)、図書室あり
- 平日朝に開催している救急・総合診療合同検討会に原則参加
- 各診療科においても専門検討会を定期的に開催
- 臨床研修管理委員会を、年2回以上開催します。また、必要に応じてプログラム運営管理小委員会を開催し、研修医の到達状況を把握しフォローします。
- 研修期間中のアルバイトは禁止しています。